2010年11月12日金曜日

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『Groupon、成功の秘訣は・・・文章力にあり?』

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The secret of Groupon's success is ... good writing?
Anthony Ha | VentureBeat | September 15, 2010


『Groupon、成功の秘訣は・・・文章力にあり?』
アンソニー・ハ|ベンチャー・ビート|2010年9月15日
抄訳:hiro. senaga

いまどきベンチャーというと、使われている技術の凄さがとかく強調されがちだ。
関わった人間の技量とか哲学といったあいまいでしかもスケールアップしないものが語られることは少ない。
だがGroupon社CEOのアンドリュー・メイソンは言う。「Groupon(クーポン共同購入サイト)の成功の要因は凄いテクノロジーではなく、むしろ優れた文章力とメールを使いこなすことだったのだ」と。

Grouponが扱う情報を内製するため、同社では現在70人のライター(writer)を雇っている。外注したり自動生成プログラムをつかったりするほうが手軽で効率的ではとの見方にメイソンはこう言う。「まだ聞いたこともないようなお店のことについてユーザーに関心を持たせるのに手間をかけた文章作成や練り上げられたコンテンツはとても重要なのだ」

情報をメールで届けるという初期のGrouponのやり方はその後の同社のスタイルに大きく影響したとメイソンは言う。ThePoint.com社(Grouponの前身)の時からユーザーをどうつなぎとめるかは大きな課題だった。
初期のころはユーザーが解約しない程度に購入イベント開催すればよかっただけだったが、それでもメールは裁量が大きいため、ニューズレターをメールする(訳注:つまりメルマガする)スタイルはそれなりのリスクもともなった、と言う。

人間のスキルとメールを主体としたサービスなんてシリコンバレーでは時代遅れ以外には受け止められなかったはずだが、テクノロジー中心でいかなかったのは同社がシカゴを拠点としていたからなのだろうか?

「(人材とメールの組み合わせだけで)そこまでできるってこと誰も十分には知らなかっただけだ」とメイソンは言う。

「いろんな制約が今のGrouponのスタイルを確立していったんだ」と彼は続ける。たとえば一日に一つの購入イベントしか開催しなかったのも、それ以上できる余力が同社にはなかったからだ。だがこうした制約と向き合うことで同社独自のビジネスモデルをよりユニークで独創的なものにすることができたのだと言う。

そして現在、Grouponには同社が裁ける以上の規模の依頼主が殺到している。いまや一つの購入イベントから発生する利益の最大50%はGroupon社の取り分になるのだ。それでも、同社のサービスに行列する依頼主は35,000店にもなるという。「もっと合理的に徹底して対応したら、取り分はもっと高くなってるよ」とメイソンは言う。

従来は一つの商品やサービス(主にレストラン)に対して共同購入をつのるスタイルだったが、最近、Grouponでは個人の嗜好にあわせ購入ユーザーを選別するあたらしいサービスも立ち上げた。つまり同社のビジネスはさらに拡大する可能性がある。「これまでユーザーが持っていたGrouponというサービスのイメージを一変させるくらいインパクトのあるもの」をテーマに開発を進めてきたとメイソンは言う。「これから六か月で大きくかわるよ。これまでのGrouponのサイトが・・・そうだね、言ってみれば今のウィンドウズにくらべ昔のMSDOSがこんな感じだったんだってくらい新しいものに生まれ変わる」

メイソンの人となりや考えについて関心のあるかたは2010年5月投稿のこちらへどうぞ!

(了)

訳者からの断り:
 ”2010年5月投稿”とあったのでその投稿分も含めて翻訳を敢行していました。
ネットの世界は広いようで皆の関心が集中する領域は意外と狭いんですね。
この元記事はすでに『Groupon CEO,創業から今後の戦略までを語る - インタビュー記事要約』という記事になって存在していました。しかもかなりの方がご覧になられていると思います。
翻訳作業も終盤になって気づいたのですが、注意深く要約と比較した結果、このサイトのテーマでもあるベンチャー起業という視点からみると要約では割愛される部分もかなりあるため、敢えてここに掲載することにしました。要約は要約で完成されてますし読みやすいですよ。
ただそれでも読んでくださる方のために、ぼくなりに強調したい箇所を太字にして効率よく読み進められるようにしています。
また末尾にはコメントもつけています。よろしければお進みください。Hiro. Senaga

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Being in a band made my business rock
Kim-Mai Cutler | VentureBeat | May 7, 2010

『バンド体験でビジネスもノリノリ』 ~アンドリュー・メイソンが語るGroupon成功の要因~
キム・メイ・カトラー|ベンチャービート|2010年5月7日
抄訳:hiro. senaga

いまや時価10億ドル($1=80円で約800億円)といわれるGroupon社の創業者兼CEO、アンドリュー・メイソン。だがかれの経歴はテクノロジー・ベンチャーを率いるイメージからかけ離れている。


コンピュータ・サイエンスを専攻したわけでも、MBAコースに進んだわけでもなく、偶然ソフトウェア開発に足を踏み入れるまでの彼は一介のミュージシャンでしかなかった。


公共政策にもともと関心のあった彼はやがて問題解決型サービスそして群衆行動に影響を与えることを目的としたThePointというサイトを制作する。マルコム・グラッドゥエルの著作(Tipping Point (邦訳本名:『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』))に代表されるような”Tipping Point(変化がおきる転換点)”をこのサイトから作り出そうという発想に基づくものだった。Tipping Pointとは集団の規模があるレベルに達したときに人々は率先してお金や時間をそのアイデアに注ぎ込むというマーケティング・コンセプトだ。


だがThePoint社の立ち上がりは当初想定していたようにはいかなかった。そこで創業チームは新しいアイデアを探すことに傾注した。一年半の試行錯誤を経て、かれらは共同購入というビジネスモデルの検証を始めたのだった。そして18ヶ月後、その試みは実に470万枚のクーポンを売りさばくという成果に結実する。それが注目され、2010年4月にはロシアのDigital Sky Technologies社とBattery Venture社から135百万ドル(約108億円)の資金を調達することになった。


最初の過渡期をどうのりきったのか?どうマネージしてきてそして次はどこに向かおうとしているのか?我々は電話でメイソンにインタビューをおこなった。


Q:「ThePoint社のときのビジネスモデルから違うモデルへどうやって移行していったんですか?」


メイソン:「ThePoint社を立ち上げて最初の一年、ぼくたちは経験のない起業家がおこすような典型的な失敗をたくさん経験したんだ。だけど最初っから、ThePoint社みたいなスタイルにはどういったビジネス・モデルが有効かを検証してはきてたんだ。広告もそうだし、募金活動も一つだった。でもその中でも共同購入に一番関心を持ったんだ。


過去にあった共同購入サイトがなぜうまくいかなかったのか考えたのさ。先に誰かがすでにやっててしかもそれは見事に失敗してたからね。


Mercataなんてサイトもその一例だ。たくさんの人が買うと、価格は安くなる。問題はね、十分な規模の購入者を集めるのに一週間という時間がかかかってたことなんだ。例えばカメラを共同購入しようと思うと一週間もまたないといけない。購入する側としては本当にそれだけ人数が集まるのか不安だし、なによりも時間がかかることで”衝動性”がなくなってしまうんだよ。もうひとつの問題はね、たとえ十分な人数がある商品の共同購入に参加したとしても、Walmart(ウォルマート)やアマゾンで買えるほど安くはなかったってことさ。かれらは巨大な購買力を持ってるからね。小売店サイトのマージン率はすっごく低くて値下げしても限界があったんだよ。


だから共同購入ってビジネスモデルを検証するってなった時も、まさかこんなにブレイクするなんて思ってなかったからサイド・プロジェクト程度でスタートしたんだ。


失敗していった前例と同じ轍を踏まずにどうやって顧客の問題を本質的に解決できるか?Grouponの基本構想はそこだったんだよ。対象エリアはまずローカルに絞って始めた。そうすることで直接お店に出向いていけるし、直接交渉することで短時間で依頼主を見つけることができたからね。そして大事なことはそうした共同購入の機会を、ユーザーにとってそのローカルの中ではベストなものにしたことだった。そのローカルにいかないと利用できない機会をね。


こうした依頼主(レストランなど)のマージン率は高いから、共同購入するユーザーが得られるディスカウント効果も十分だったよ。レストランを経営してたら、何人客がこようと材料は毎日買い揃えなきゃいけないからね。


ぼくたちが意図してたのは、街中の購買力を一つのお店に集中させることだったんだ。これのオモシロいところはね、住んでる街を”再発見”させることにあったんだ。自分たちの住んでいる街はこんなにオモシロい場所なんだって、再認識させる効果もあったんだ。だから街に住むみんなが望んでいるようなあるいは読みたがっているような質の高い店舗にサービスを集中させたんだ。


みんながぼくたちに街のガイド役を期待していることはすぐに気づいたよ。お得な共同購入サービス付きのね。でもこのことでみんなは前だったらそのお店のことをただ読んでおしまいってところをもう一歩踏み込ませることができたんだ。


たとえばでかけてもいつも同じようなレストランとか映画館にしかいかないようなタイプの人たちにとって、Grouponが仕掛けていることは違うお店を試そうと外出するいい機会になったんだ。これがロジック、そしてそれはうまくいったってこと。共同創業者はみんな経験豊かな起業家だけど、この共同購入モデルを検証する意義を理解してくれたよ。


でもGrouponはまだ検証中の一企画でしかなかった。本業にするかどうかの判断はしなかったんだ。うまくいくかどうか・・・芝生の成長を眺めているようなもんだったよ。意識しないで肥っていく感じに似てるかな。朝起きてああぼくは肥ってたんだって気づく感じだね。昨日までやせてたのに一晩で肥っちゃったとかじゃなくて、きづいたらああ肥ってたんだって感じだよ。このビジネスモデルがどれだけ急成長しているのか気づいてから、社名を変えることになっちゃうんだけどね。


でもはじめはね、共同購入の通知もThePointのサイトでおこなってたんだ。簡単なFlashベースのウィジェットを埋め込んでさ。でGrouponって名前のブログを始めた。謳い文句は”Get your group on(あなたのチームを参加させよう)”だった。でそのウィジェットで共同購入の申し込みができるようにしたんだ。


ユーザーはどんどん増えていったから、ぼくたちももっと真剣に投資をすることにしたんだ。一年間くらい前だったかな、ブログのテコ入れが必要だってなったのは。デザインもちゃんとしなきゃって。でも作業には時間がかかったよ。


当時のみんなはこの過程を楽しんでたね」


Q:「ビジネスをスケールアップする上で難しいと感じることは?」


メイソン:「今のところはめだってないな。こまごまとしたことはたくさんあるけどね。優秀な人材を雇うのも難しいし、必要なサービス機能に集中しているのかを把握するのも難しい。社内の雰囲気を保全していくのも難しいね。いま社員は300人いるんだけど、その半分は僕も知らないんだ。


自分では、この会社がこれから一年は働くみんなにとってクールで楽しいところであり続けることはとても重要だけどね」


Q:「Zapposの流れを継承するようにも聞こえますが、実際にはどうやっていくんですか?」


メイソン:「たのしい雰囲気を作り出す人にそれなりの権限とポジションをあげること。たとえば40人ものライターを雇ってマネージしている編集者はぼくがバンドをしていたころからのメンバーなんだ。ま、全体のクリエイティブ・ディレクターみたいな存在だよ。これをやる前は数人程度のチームしかまとめてなかったからね、経験とかだけで判断しようとすると全然見合わないよ。


でも彼はそれだけではわからないものを持っている。彼は部下を守ってくれるし、またぼくたちが手掛けることは楽しまなくちゃいけないって考えてるようなヤツさ。バンドを組むときだってそんなもんだよ。ちょっと変わってるってみられることを避けてちゃいけないんだ」


Q:「それは入社する条件ですか?」


メイソン:「ちがうよ。ただ自分らしくいればいいんだ。たまたまぼくたちみんながすこし変わってるだけだよ。まともな人でもダイジョウブさ。


ぼくの仕事で魅力的なのは存在しない領域に独創性を吹き込んでカタチにしていくこと。ミュージシャンをやめてビジネスに没頭することにしたのは、この世界ではぼくたちもまだまだ”変わってんな”って言われる機会がたくさんあるからね。たとえば記者会見の場とか。


Mob.ly買収の記者会見で、ぼくはシカゴには世界最大の排水濾過システムがあるって引き合いに出したんだけど、それはね・・・よくあるでしょ、たとえば田舎の小さい町に立ち寄ってみると”この街の鉄鉱石の一人あたりの生産量は全米一なんだ”って熱くかたるような光景にでくわしたことない?あんな感じだよ。記者会見を開きたかったのは、シカゴのテクノロジー・インダストリーは確かに有名じゃないけど、たくさんの人がそれなりに誇りをもって支えてくれるってことを知らしめたかったんだ。


Q:「ミュージシャンをやってた経験は10億ドルベンチャーを経営するのになにか役立ってますか?」


メイソン:「いまでもよくへまをやらかすよ。たぶんどこまでいっても準備不足なCEOなんだろうね。向いてるのかもわからないよ。バンドにいたことで人と違う意見をもつことや妥協すべきでないところはそうしないってことが身についたと思うんだ。信念があるなら貫かなきゃね。


これはこの会社のカルチャーの中でも重要なことだと思うよ。思うにぼくたちは社会のなかで触媒の働きをしているんだ。Groupon(この場合はクーポン)を購入するたびに、人はあたらしい体験を購入していることになる。この体験させるってことをもっとスパイラルに提供していきたいって思うよ」


Q :「それはGroupon で購入した体験やイベントを画像サービスやツイッターを通してフィードバックしてもらうようなことを指すのですか?」


メイソン:「そうだね」


Q:「来年に向けてGrouponがどこに向かうのかもうすこし話してもらえますか?まだ未進出のマーケットへの対応が最大の課題ですか?それともまったく新しい商品とかサービスを検討されているとか?」


メイソン:「この部分は悪いけど詳しく言えないよ。この業界はとても競争が激しいんだ。iPhone G4のコピーがもう中国ではでまわってるくらいだからね」


Q:「わかりました。おおきくなっていくなかでGrouponにはどんなふうになってもらいたいですか?」


メイソン:「スモールビジネスのエンドユーザーにとってベストのサービス・プロバイダーだね」


Q:「Mob.lyを買収して狙う効果は?」


メイソン:「モバイル・プラットフォームの分野でかれらは経験が豊富だからね。GoodRecやOpenTableなどのローカル特化アプリやNBC放送のローカル・アプリなどを作ってきたし。これからはネットの利用もどんどんモバイル化していくだろうからね。


これだけはいえるよ。モバイル・アプリを使えばGrouponのウォレットに常時接続できるってこと。これはPCネットではできないからね。いまだとね、たとえばふらっとバーに立ち寄ってぼくがGrouponの人間だとわかると聞きつけた人間が封筒にはいった30枚のGrouponをだしてきてまだ使えるか確かめてみてくれ!みたいに不便な状態なんだよ。


モバイル・アプリだとGrouponウォレットが使えるからそういうこともないしね。全部モバイルアプリの中で管理しちゃえば必要なときに最寄りの小売店やレストランを見つけられるからね。


Q:「だとえば失効間近になったGrouponをお知らせするような機能とか?あるいは街角のアイスクリーム屋さんでいまXXX人集まると50セントディスカウントで買えますよみたいな?」


メイソン:「まだコメントできないんだよ」


Q:「口座にもまだ潤沢な資金があるのにDST社から最近資金を調達したワケは?」


メイソン:「いま集中しているのは圧倒的なサービスを創りあげること。そして今回ぼくたちが資金調達をした投資家たちはそのことをよく理解している。


調達した資金は部分的に資本金に積み立てられる。初期の創業メンバーの保有株買い取りがほとんどだね。初期投資してくれた投資家たちは株を手放さなかったよ。


こういったことをやる上でお金は重要な動機ではないんだ。お金の問題っていつもバイナリーなんだよ。十分あるかないかだけなんだ。だから今回の調達は会社の株のわずかな部分を放出してこのお金のバイナリーな問題を解決したわけさ」


Q:「これは新規上場モードに入ったとみてもいいのでしょうか?」


メイソン:「今回の資金調達に関しては純粋に開発コストを確保したかっただけだよ。収益は上がっているからね。口座の預金額も潤沢だ。そして立ち位置も上々だよ。世界規模のEコマース・カンパニーに向けて集中することになるがそれも柔軟に対応していける」


(了)


訳者コメント


アンドリュー・メイソンはタダモノじゃない。
彼を単なるGrouponというブランドでくくってしまうと見誤ることになるとぼくは感じました。
彼に似た雰囲気を漂わせながら手の届かないくらい巨大なブランドをつくりあげた男・・・そうアマゾンのジェフ・ベゾスを彷彿とさせたからです。
それはメイソンがすでにビジネス・モデルを複製できるくらい智慧をため込んでいると思わせる箇所がおおいことにもよるのでしょう。


彼は成功する事業をおそらく何度も複製することができるはずです。
これが結構当たり前じゃないんですよ。一つのことで成功はしたけど別のモデルでは失敗してしまう経営者のほうが圧倒的に多いんですから。
そう水源をドリルで探すやり方を学ばずにたまたま成功している経営者もおおいのです。


メイソンは群衆の心理に働きかける重要性を熟知している。
Writerを70人抱えているところからもそれはうかがえますね。
どんなにシステムやツールが便利になっても、我々はその先に常に自分にとってインパクトのある情報を追い求めているものです。
テキストであれ、画像であれ、数字であれそれは変わらないと思います。
そして究極に進化したAIが登場するときまで、人にインパクトを与えられるのは人しかいないという原理は変わらないでしょう。


メイソンが他人の反応を敏感に感じ取るのにバンド時代の経験は相当役にたっていると思うのは僕だけでしょうか。
創業メンバーに経験者を混ぜてるあたりなど経験値の重要性も熟知していますしね。


こんなに誉めて彼がポシャったらどうしよう(笑)
でもぼくはやっぱりしばらくはアンドリュー・メイソンから目が離せない!(Hiro. Senaga)

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